
「せっかく時間をかけて作った作り置き、冷凍したら味が落ちてまずい…」
「解凍したら水分でべちゃべちゃ。食感もパサパサでがっかり…」
そんな経験から、作り置きの冷凍に苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。忙しい毎日の味方になるはずの作り置きが、美味しく食べられないのは悲しいですよね。
ご安心ください。作り置きの冷凍がまずくなるのには、実は明確な理由があります。そして、その原因さえ理解すれば、誰でも冷凍前と変わらない、むしろ味が染みて美味しくなる作り置きを作ることが可能です。
この記事では、作り置きの冷凍がなぜまずくなってしまうのか、その科学的な原因から、今日からすぐに実践できる「まずくならないための5つの黄金ルール」まで、徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたは「作り置き冷凍の達人」に。週末に作った美味しいおかずで、平日の食卓をもっと豊かに、もっと楽にしましょう!
なぜ?作り置きを冷凍するとまずくなる5つの原因

作り置きを冷凍してまずくなるのには、主に5つの原因が考えられます。まずは敵を知ることから始めましょう。ご自身の作り置きがどれに当てはまるか、チェックしてみてください。
原因1:冷凍による「細胞破壊」とドリップ
食品を冷凍すると、内部の水分が凍って氷の結晶になります。この時、家庭用の冷凍庫でゆっくり凍らせると、氷の結晶が大きく成長し、食材の細胞壁を破壊してしまうのです。
そして解凍する際に、壊れた細胞から水分や旨味成分が流れ出てしまいます。これが「ドリップ」と呼ばれる現象です。ドリップが多いほど、食べた時にパサパサしたり、水っぽくなったり、旨味が抜けた味気ない仕上がりになってしまいます。
原因2:乾燥と酸化による「冷凍焼け」
冷凍庫内に長期間保存していると、食品の水分が徐々に蒸発して乾燥し、同時に油分が酸化してしまいます。これが「冷凍焼け」です。
冷凍焼けを起こした食品は、
- 表面がパサパサになる
- 変色する
- 油臭いような独特の嫌な臭いがする
など、風味や食感が著しく損なわれてしまいます。これは、食品が空気に触れることで起こりやすくなります。
原因3:そもそも「冷凍に不向きな食材」を使っている
食材には、冷凍に適したものとそうでないものがあります。特に、以下のような食材は冷凍によって食感が大きく変わってしまうため注意が必要です。
- 水分が多い野菜:きゅうり、レタス、トマトなど。解凍すると水分が抜けてべちゃべちゃになります。
- 繊維質の野菜:ごぼう、たけのこなど。解凍後にスジっぽさが目立ちやすくなります。
- 豆腐、こんにゃく:内部の水分が抜けて、スカスカ、ゴムのような食感に変わります。
- じゃがいも:でんぷん質が変化し、モソモソとした食感になりがちです。
これらの食材を使った料理を冷凍すると、「まずい」と感じる原因になりやすいのです。
原因4:冷凍・解凍で変化する「味付け」
冷凍すると、実は味の感じ方が変わることがあります。例えば、だしや醤油の風味は感じにくくなる傾向があり、一方で塩味や甘みは解凍後により強く感じられることも。
また、生姜やニンニクなどの香味野菜は、冷凍することで香りが弱まることがあります。いつもと同じ味付けで作ったはずなのに、解凍して食べたら「なんだか味がぼやけている」「しょっぱすぎる」と感じるのはこのためです。
原因5:間違った「冷凍・解凍方法」
作り置きの美味しさを保つには、冷凍・解凍のプロセスが非常に重要です。
- 冷凍:熱いままの料理を冷凍庫に入れるのはNG。庫内の温度が上がり、他の食品を傷める原因になります。また、ゆっくり凍結させることで、前述のドリップが出やすくなります。
- 解凍:常温での自然解凍は、食中毒菌が繁殖しやすく衛生的ではありません。また、解凍にムラができ、美味しさを損なう原因にもなります。
【これで解決!】冷凍でも美味しい作り置きを作る5つの黄金ルール

原因がわかれば、対策は簡単です。以下の5つの黄金ルールを守るだけで、あなたの作り置きは劇的に美味しくなります。
ルール1:冷凍向きの食材・調理法を選ぶ
まず基本となるのが、冷凍に適した食材を選ぶこと。
- 肉類、魚介類:ひき肉、薄切り肉、鶏肉、鮭、エビなどは冷凍に強い食材です。
- きのこ類、根菜類:きのこは旨味が増し、人参やかぼちゃなども冷凍に適しています。
- 油分の多い食材:ひき肉料理や揚げ物など。
調理法としては、水分が出にくい調理法や、ドリップが気にならない調理法がおすすめです。
- 煮込み料理:カレー、ミートソース、煮魚など。味が染み込み、解凍後も美味しく食べられます。
- 下味冷凍:肉や魚に調味料を揉み込んで冷凍する方法。味がしっかり染み込み、調理時間も短縮できます。
- ハンバーグやつくね:焼いてからでも、焼く前の状態でも冷凍可能です。
ルール2:味付けは「濃いめ」「しっかりめ」が基本
解凍すると味が薄く感じられることを想定し、通常よりも少し濃いめに味付けするのがコツです。
- 醤油やみりんを少し多めにする
- 砂糖やケチャップで甘みやコクをプラスする
- しっかりと煮詰めて水分を飛ばす
また、生姜やニンニクなどの香味野菜は、すりおろすだけでなく、粗みじん切りにして加えると香りが残りやすくなります。
ルール3:「急速冷凍」で美味しさを閉じ込める
ドリップを防ぐ最も効果的な方法は「急速冷凍」です。食品が凍るまでの時間が短いほど、氷の結晶が小さくなり、細胞の破壊を最小限に抑えられます。
家庭でできる急速冷凍のコツは以下の通りです。
- 粗熱をしっかり取る:料理が冷めてから冷凍庫へ。
- 小分け&平らにする:熱が伝わりやすいように、1食分ずつ小分けにし、なるべく平らな形状で保存袋に入れます。
- 金属トレーを活用する:熱伝導率が良い金属製のトレーの上に置いて冷凍すると、凍結スピードが格段にアップします。
ルール4:空気を抜いて「密封」!冷凍焼けを防ぐ
冷凍焼けの原因は「空気」です。保存する際は、とにかく食品を空気に触れさせないことが重要です。
- ラップでぴったり包む:おかずを直接ラップで包み、空気を遮断します。
- 保存袋の空気を抜く:ラップで包んだものをフリーザーバッグなどの保存袋に入れ、ストローを使うなどして中の空気をしっかり抜いてから口を閉じます。
- 保存容器は適切なサイズを:容器に保存する場合は、中身と容器の間に隙間ができないよう、適切なサイズの容器を選びましょう。
ルール5:料理に合わせた「適切な解凍」を実践する
最後の関門が「解凍」です。料理に合わせた最適な方法を選びましょう。
- 冷蔵庫で自然解凍:最もおすすめの方法。時間はかかりますが、低温でゆっくり解凍するため、ドリップが出にくく衛生的です。食べる半日〜1日前に冷凍庫から冷蔵庫に移しておきましょう。
- 電子レンジで解凍:時間がない時に便利です。解凍ムラが起きやすいので、「解凍モード」を使い、途中でかき混ぜたり、裏返したりする工夫が必要です。加熱しすぎると硬くなるので注意してください。
- 流水解凍:ボウルに水を張り、密封した保存袋ごと浸します。比較的短時間で解凍できます。
- 凍ったまま加熱:スープや煮込み料理、下味冷凍した肉などは、凍ったまま鍋に入れて加熱調理できます。
【食材別】冷凍作り置きの向き・不向き一覧

ここで改めて、冷凍に向いている食材と、工夫が必要な食材を一覧で確認しておきましょう。
| 冷凍に向いている食材 | 冷凍に不向き(工夫が必要)な食材 | |
|---|---|---|
| 野菜 | 人参 かぼちゃ ブロッコリー(硬めに茹でる) ほうれん草(茹でて刻む) きのこ類 玉ねぎ(加熱・みじん切り) ピーマン | きゅうり レタス トマト もやし 大根(生) ごぼう |
| いも類 | 里芋(茹でる) さつまいも(加熱・マッシュ) | じゃがいも(マッシュすれば可) こんにゃく |
| 肉・魚 | ほとんどの肉類・魚介類 (特にひき肉、鶏肉、鮭、ぶりなど) | – |
| その他 | 油揚げ ごはん パン 豆類(加熱済み) | 豆腐 卵(生・ゆで卵) マヨネーズを使った料理 |
【調理法別】冷凍作り置きにおすすめのメニュー

具体的にどんなメニューが冷凍に向いているのか、いくつか例を挙げます。
- 煮込み料理
- ミートソース、キーマカレー:パスタやご飯にかけるだけで一品完成。
- 豚の角煮、鶏肉のトマト煮込み:味が染みて、解凍後さらに美味しくなります。
- 下味冷凍
- 鶏肉の塩麹漬け、豚肉の味噌漬け:焼くだけ、炒めるだけでメインディッシュが完成。
- ぶりの照り焼き用下味:片栗粉までまぶして冷凍しておけば、あとは焼くだけ。
- ひき肉料理
- ハンバーグ、つくね:焼いてから冷凍すれば、温めるだけ。焼く前に冷凍すれば、いつでも焼きたてが楽しめます。
- そぼろ:三色丼やチャーハンの具材に。
- 揚げ物(衣をつけた状態で冷凍)
- とんかつ、唐揚げ、エビフライ:凍ったまま揚げるだけで、いつでも揚げたてが味わえます。
【まとめ】正しい知識で「まずい」冷凍作り置きを卒業しよう!
作り置きの冷凍がまずくなるのは、あなたの料理の腕が悪いわけではありません。冷凍による食材の変化と、それを防ぐためのちょっとしたコツを知らなかっただけなのです。
今回ご紹介した5つの黄金ルールをまとめます。
- 冷凍向きの食材・調理法を選ぶ
- 味付けは「濃いめ」「しっかりめ」
- 「急速冷凍」で美味しさをキープ
- 空気を抜いて「密封」し、冷凍焼けを防ぐ
- 料理に合わせて「適切に解凍」する
これらのポイントを押さえるだけで、冷凍作り置きは「まずい」ものから「美味しくて便利な」毎日の強力なサポーターに変わります。
まずは週末、この記事を参考に一品だけでも冷凍作り置きに挑戦してみませんか?きっと、その便利さと美味しさに驚くはずです。正しい知識を味方につけて、賢く美味しい作り置きライフを始めましょう!



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