
住宅ローンや教育ローンなど、人生の大きな局面で向き合うことになる「ローン」。その際に、多くの人が頭を悩ませるのが「変動金利」と「固定金利」、どちらを選ぶべきかという問題です。
金利の選択は、将来の返済総額に数百万円単位の違いを生むこともある、非常に重要な決断です。しかし、専門用語が多く、仕組みが複雑に感じるため、「結局どっちがお得なの?」と混乱してしまう方も少なくありません。
この記事では、そんなお悩みを抱えるあなたのために、ローン金利の基本から、変動金利と固定金利それぞれのメリット・デメリット、そして、どちらのタイプがあなたに合っているのかを判断するための具体的なポイントまで、分かりやすく徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたの中に明確な判断基準が生まれ、自信を持って最適な金利タイプを選べるようになっているはずです。
そもそも金利とは?変動金利と固定金利の基本を解説

まず、ローンの金利タイプを理解する上で欠かせない「金利」の基本と、「変動金利」「固定金利」の仕組みについておさらいしましょう。
金利とは、お金を借りた際に、元金(借りたお金そのもの)に上乗せして支払う手数料(利息)の割合のことです。この金利の決まり方には、大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。
変動金利とは?
変動金利とは、その名の通り、借入期間中に金利が変動する(変わる)タイプのローンです。 一般的に、半年に一度金利が見直され、その時の経済状況(市場金利)に応じて適用される金利が上下します。
- 特徴: 市場金利が下がれば返済額も減る可能性がある一方、市場金利が上がれば返済額が増えるリスクがあります。
固定金利とは?
固定金利とは、借入期間中、金利がずっと変わらないタイプのローンです。 契約時に定められた金利が、完済まで適用され続けます。
- 特徴: 毎月の返済額が一定のため、将来の返済計画が立てやすいという安心感があります。市場金利がどれだけ変動しても、自分の返済額には影響しません。
| 変動金利 | 固定金利 | |
|---|---|---|
| 金利の見直し | 半年に1回など定期的 | なし(契約時に決定) |
| 返済額の変動 | あり | なし |
| 金利上昇リスク | あり | なし |
| 金利低下メリット | あり | なし |
| 当初の金利 | 低い傾向 | 高い傾向 |
変動金利のメリット・デメリットを徹底解説

変動金利は「リスクはあるけれど、低金利の恩恵を受けられる可能性がある」タイプです。具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。
変動金利のメリット
- メリット①:当初の金利が低い
最も大きなメリットは、固定金利に比べて当初の金利が低く設定されていることが多い点です。同じ金額を借りる場合、当初の毎月の返済額を低く抑えることができます。 - メリット②:金利低下の恩恵を受けられる
契約後に市場金利が低下すれば、それに連動して適用金利も下がり、毎月の返済額や総返済額が減少します。現在の歴史的な低金利が続けば、固定金利よりも総返済額を大きく抑えられる可能性があります。
変動金利のデメリット
- デメリット①:金利上昇のリスクがある
最大のデメリットは、将来、金利が上昇するリスクを常に抱えていることです。金利が上昇すると、毎月の返済額が増え、家計を圧迫する可能性があります。 - デメリット②:将来の返済計画が立てにくい
返済額が変動するため、長期的な返済計画やライフプランが立てにくいという側面があります。特に、子どもの教育費など、将来的に大きな支出が控えている場合は注意が必要です。 - 知っておきたい「5年ルール」と「125%ルール」
変動金利には、金利が急上昇しても返済者の負担が急激に増えないように、以下のようなルールが設けられていることが一般的です。- 5年ルール: 金利が上昇しても、毎月の返済額は5年間変わらない。
- 125%ルール: 5年後に返済額が見直される際も、それまでの返済額の1.25倍が上限となる。
固定金利のメリット・デメリットを徹底解説

固定金利は「金利は高めかもしれないけれど、将来にわたって安心を得られる」タイプです。メリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
固定金利のメリット
- メリット①:返済額が一定で安心
最大のメリットは、完済まで毎月の返済額が変わらないことです。将来の金利上昇を心配する必要がなく、長期にわたって安定した返済計画を立てることができます。 - メリット②:家計管理がしやすい
毎月の支出額が確定しているため、家計の管理が非常にしやすいです。「教育費」や「老後資金」など、将来のライフプランニングを具体的に進めたい方にとって、大きな安心材料となります。
固定金利のデメリット
- デメリット①:変動金利より金利が高め
一般的に、変動金利よりも当初の金利が高く設定されています。そのため、借入当初の毎月の返済額は変動金利よりも高くなる傾向があります。 - デメリット②:金利が下がっても恩恵がない
もし市場金利が大幅に低下しても、契約時の金利が適用され続けるため、その恩恵を受けることはできません。低金利が長く続いた場合、変動金利を選んだ場合と比較して、総返済額が多くなってしまう可能性があります。
【比較】変動金利と固定金利、あなたに合うのはどっち?タイプ別診断

それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自分はどちらを選ぶべきか、具体的な人物像を例に見ていきましょう。
変動金利がおすすめな人
- 金利上昇リスクを許容できる人
「もし金利が上がっても、家計にまだ余裕がある」と考えられる人。共働きで収入に余裕がある、など。 - 手元資金に余裕があり、繰り上げ返済を考えている人
金利が低い今のうちに積極的に繰り上げ返済を行い、元金を早く減らしたいと考えている人。 - 借入期間が短い人
借入期間が10年〜15年程度と短ければ、金利上昇の影響を受ける期間も短くなるため、リスクをコントロールしやすいと言えます。 - 経済や金利の動向をチェックするのが苦ではない人
定期的に金利のニュースなどを確認し、状況に応じて対策(繰り上げ返済など)を考えられる人。
固定金利がおすすめな人
- 将来の返済額を確定させ、家計を安定させたい人
「毎月の返済額は絶対に増やしたくない」という安定志向の人。 - 金利の変動に一喜一憂したくない人
将来の金利動向を常に気にする生活はストレスに感じる、という人。 - 子どもの教育費など、将来の支出が具体的に決まっている人
今後十数年にわたって教育費のピークが続くなど、住宅ローン以外の支出計画をしっかり立てたい人。 - 借入期間が長い人
30年、35年といった長期のローンの場合、将来の金利変動リスクも大きくなるため、固定金利でリスクを回避するメリットは大きくなります。
金利タイプ選びで失敗しないための3つのポイント

最後に、後悔のない選択をするために、必ず押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
1. 現在の金利状況だけでなく、将来の動向も視野に入れる
2024年に日銀がマイナス金利政策を解除したように、金融政策は変わり得ます。現在の低金利が永遠に続く保証はありません。「これまでは低金利だったから、これからも大丈夫だろう」と安易に考えず、将来金利が上昇する可能性も必ず考慮に入れてシミュレーションしましょう。
2. 自分のライフプランや資金計画と照らし合わせる
金利タイプに絶対的な「正解」はありません。あなた自身の収入、家族構成、今後のライフイベント(出産、子どもの進学、転職など)、そして何より「リスクをどれだけ許容できるか」という価値観によって最適な選択は変わります。目先の金利の低さだけでなく、ご自身の人生設計と照らし合わせて考えることが最も重要です。
3. 金融機関の担当者や専門家に相談する
迷ったときは、一人で抱え込まずにプロに相談しましょう。複数の金融機関で返済シミュレーションを依頼し、それぞれの担当者の話を聞くことで、多角的な視点から判断できます。また、必要であれば中立的な立場のファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのも有効な手段です。
まとめ
「変動金利」と「固定金利」、どちらを選ぶべきかという問題は、ローンの契約において最も重要な選択の一つです。
- 変動金利: 低金利の恩恵を受けられる可能性があるが、将来の金利上昇リスクを伴う。リスク許容度が高く、資金に余裕がある人向け。
- 固定金利: 返済額が一定で将来の計画が立てやすい安心感があるが、金利は高めで金利低下の恩恵は受けられない。安定志向で、計画的な家計管理をしたい人向け。
どちらの金利タイプにも一長一短があり、どちらが優れているということではありません。大切なのは、それぞれの特徴を正しく理解し、ご自身のライフプランや価値観に合った選択をすることです。
この記事が、あなたの後悔のないローン選びの一助となれば幸いです。



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